column 家づくりコラム

「収納は多いのに散らかる」理由|片づく家の「しまい場所設計」

 

はじめに

 

「ウォークインクローゼットもパントリーもつけたのに、なぜかリビングが散らかる」。
注文住宅の後悔で多いのが、収納に関する悩みです。ただ実際は、収納面積が足りないケースはそれほど多くありません。原因の多くは、モノを使う場所と「しまい場所」の距離が合っていないことにあります。

たとえば、ランドセル置き場が2階だけなら、帰宅した子どもはリビングに置きます。
コート収納が寝室だけなら、ダイニングの椅子に掛けたままになるでしょう。
散らかるかどうかを左右するのは収納の量ではなく、「どこに戻す設計か」です。

本記事では、収納を増やす前に知っておきたいしまい場所設計の考え方と、間取りで工夫できる具体策を解説します。

なお、図面の段階で「収納はあるのに、なんとなく散らかりそう」と感じる場合は、面積よりも配置と動線の噛み合いを見直すほうが改善が早いこともあります。棚を足して解決するより、図面のうちにズレを整えるほうが確実です。

 

 

「収納が多い=片づく」ではない3つの理由

 

理由1:使う場所としまう場所が遠い

人の行動はとてもシンプルで、「2歩以内に収納がなければ、その場に置く」と言われています。リビングで使うリモコン・文房具・郵便物の定位置が廊下の納戸では、毎回しまいに行くのは現実的ではありません。
使う場所のすぐそばにちょい置きではなくちゃんとしまえる場所がなければ、どんなに広い収納があっても散らかりは止まらないのです。

 

理由2:家族の動線と収納がずれている

朝の身支度、帰宅後の片づけ、入浴前の着替え。家族が毎日繰り返す動きの「通り道」に収納がないと、モノは動線の途中で止まります。
典型例は玄関まわり。靴を脱いだ直後にカバンやコートを置く場所がなく、リビングまで持ち込んでしまう——これは収納不足ではなく、動線上の収納の”空白”が原因です。

 

理由3:「何をしまうか」が決まっていない

大きな納戸やウォークインクローゼットを設けても、「とりあえずここに入れておこう」で使い始めると、すぐに何が入っているかわからないブラックボックスになりがちです。
奥のモノを取り出すために手前のモノをどかし、結局必要なモノが見つからない。この状態は「収納がある」のに「使えていない」典型的なパターンといえます。

 

 

しまい場所設計の基本|”行動のすぐそば”に置き場をつくる

 

散らかりにくい家をつくるための原則はひとつ。「行動の終点に、しまう場所をセットする」ことです。

 

 行動  散らかるモノ  しまい場所の正解
 帰宅する  カバン・コート・鍵  玄関横の土間収納・コート掛け
 買い物から帰る  食材・日用品  玄関→パントリー直結の動線
 子どもが帰宅する  ランドセル・上着・プリント  リビング横のスタディコーナー棚
 リビングでくつろぐ  リモコン・充電器・雑誌  ソファ横のニッチ・ベンチ下引き出し
 入浴する  脱いだ衣類・タオル  脱衣室内のランドリー棚
 洗濯物をしまう  たたんだ衣類  ランドリー隣接のファミリークローゼット

 

ポイントは、行動とセットで収納を考えること。先に「何帖の収納をどこに置くか」ではなく、家族が毎日何を持って、どこを通るかから逆算すると、必要な収納の位置とサイズが自然に決まっていきます。

 

 

場所別|散らかりを止める「しまい場所」の具体例

 

玄関まわり:帰宅後30秒で手ぶらになれるか

散らかる家の多くは、玄関で荷下ろしが完了しません。
靴を脱ぐ→コートを掛ける→カバンを置く→鍵をしまう。この流れが玄関周辺で完結すると、リビングに持ち込まれるモノが激減します。

具体的には、幅90cm程度のオープン棚とコート用フック3〜4本、鍵・郵便物用の小さなニッチがあれば十分。
土間収納と兼用にすれば、ベビーカーや外遊び道具もまとめて収まり、床面積を圧迫しません。子どもの目線の高さ(100〜120cm)にフックやカゴを配置すると、小学生でも自分で片づけられる仕組みになります。

 

リビング:「出しっぱなし文化」を受け入れる収納

リビングは家族全員のモノが集まる場所。完全にモノをなくすのではなく、「出しっぱなしでも散らかって見えない」仕組みを設計に組み込むのが現実的な解決策です。

壁の厚みを利用したニッチ(奥行10〜15cm)にリモコン・スマホ・文房具の定位置をつくる、ソファ横やテレビボード内に充電ステーションを仕込む。
造作のベンチやダイニング小上がりの下に引き出しを設ければ、子どもの塗り絵やおもちゃも座ったまましまえる距離に収まります。

注文住宅なら壁面の仕上げや棚のサイズをミリ単位で調整できるため、市販の収納家具では実現しにくいジャストサイズの定位置を設けやすいのが大きな利点です。

 

キッチン〜パントリー:買い物帰りの動線がカギ

食品や日用品のストックは、買い物帰りの動線上にパントリーがなければ、キッチンカウンターに袋ごと置かれたまま放置されがち。
玄関→パントリー→キッチンがウォークスルーでつながっていると、帰宅から冷蔵庫への収納までが一直線で完了し、カウンターがリセットしやすくなります。

パントリーの棚は奥行30〜35cmの可動棚にするのがコツ。奥行きが深すぎると奥のモノが死蔵されるため、缶詰や調味料が一列に並ぶ浅めの棚のほうが、在庫が一目でわかり二重買いも防げます。

 

洗面脱衣〜ランドリー:脱いだ服が床に落ちない仕掛け

入浴前の脱衣から洗濯、干す、しまうまでの流れは、距離が長くなるほど”途中放置”が発生します。
脱衣室にランドリーバスケットを家族の人数分用意し、洗濯機との距離をゼロに近づけるだけで「洗面台の横に脱ぎっぱなし」は大きく減るでしょう。

さらに、ランドリールームの隣にファミリークローゼットを配置すれば、乾いた衣類をハンガーのまま移動して収納完了。たたむ手間を省けるだけでなく、各部屋へ衣類を配って回る配膳動線もなくなり、共働き家庭の夜の負担がぐっと軽くなります。

 

2階ホール・廊下:「通り道」を収納に変える

2階の廊下やホールは、ただの通過スペースになりがち。しかし奥行25〜30cmの壁面本棚やリネン庫を通路の片側に設ければ、通路幅を確保したまま収納量を稼げます。

子どもが成長して教科書や部活道具が増えても、自室のドアを開ける前に荷物を下ろせる棚があると、部屋の中が散らかりにくくなるメリットも。
通路として歩くだけだった空間が、家の収納力を底上げする第二の収納エリアに変わります。

 

 

子育て家庭で効く「散らからない仕組み」3つのルール

 

1. 「ゴールデンゾーン」にしまう場所を集中させる。

 → 腰の高さ(70〜120cm)に使用頻度の高いモノを配置し、子どもも大人も手を伸ばすだけで取り出し・片づけが完了する状態をつくる。

2. 「一時置き」と「定位置」を分ける。

 → ダイニングテーブルの端やカウンター上にトレーやカゴをひとつ置き、郵便物やプリントの一時避難所にする。週末にまとめて仕分ければ、テーブルの上は毎日リセットできる。

3. 「帰す距離」を3歩以内にする。

 → おもちゃはリビングのベンチ下、文房具はスタディコーナーの引き出し、タオルは洗面台の真横。距離が近ければ、子どもでも片づけが”ついで”の動作になる。

 

  

よくある質問(Q&A)

 

Q. 収納率の目安はどのくらいですか?
A. 一般的には延床面積の12〜15%と言われますが、数字だけで安心するのは危険です。面積よりも「使う場所のそばにあるか」「出し入れが1アクションで済むか」のほうが、日々の片づけやすさに直結します。

 

Q. パントリーやファミクロをつけると面積が増えて高くなりませんか?
A. 専用の部屋を増やすとコストは上がりますが、通路の片側を棚にする、壁厚を利用したニッチを設けるなど、面積を増やさずに「しまい場所」を確保する方法も多くあります。設計の初期段階で動線と収納をセットで検討すると、無駄な廊下が減り、結果としてコンパクトに収まるケースも少なくありません。

 

Q. 子どもが成長したら収納が足りなくなりそうで不安です。
A. 可動棚やハンガーパイプの高さを変えられる仕様にしておくと、年齢に合わせてレイアウトを更新しやすくなります。あらかじめ下地を入れておけば、棚の追加や位置変更も低コストで対応可能です。

 

 

まとめ

 

散らかる原因は、収納の不足ではなく「しまい場所」と「行動の場所」のズレにあることがほとんどです。

 

・帰宅後30秒で手ぶらになれる玄関まわりの設計  
・リビングの「出しっぱなし」を受け止めるニッチやベンチ下収納  
・家事動線の終点に必ずセットする収納スペース  
・子どもの目線の高さに合わせた「自分でしまえる」仕組み

 

注文住宅だからこそ、家族の動きに合わせたしまい場所をミリ単位で設計できます。収納の量を増やす前に、まずは「誰が・いつ・どこで使い、どこに戻すか」を書き出してみてください。

 

いちいホームでは

収納は「広さ」より、暮らしの動きに合った「しまい場所」の配置で片づけやすさが決まると考えています。
もし今、図面や間取りを見ながら「このままだと散らかりそう」と感じているなら、着工前にズレを整理できるセカンドプランの相談をご活用ください。

 

 

 

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