column 家づくりコラム

「良さそう」を言語化するチェック|動線・収納・採光の確認表

はじめに

 

モデルハウスや完成見学会を回ると、「なんか、いい感じ」「なんとなく広く見える」と感じることがあるでしょう。けれど帰宅して家族に説明しようとすると、言葉がうまく出てこない。比較したいのに何を比較すればいいのかがぼんやりしている――。

その原因はシンプルで、チェックすべき観点が整理されていないからにほかなりません。間取り図を読み解く力は、専門知識がなくても「動線」「収納」「採光」の3つの切り口で十分補えます。

本記事では、この3分野に絞って「ここだけは確認しておきたい」チェック項目を一覧化しました。打ち合わせの場に持っていけるよう、具体的な数値や判断基準もセットでまとめています。

 

 

1|なぜ「動線・収納・採光」の3つなのか

 

間取りの良し悪しを左右する要素は数多くありますが、入居後の不満ランキングで上位に挙がるのは決まってこの3つに集中しています。

 

動線が長い、ぶつかる → 毎日の家事時間が地味に膨らむ  
収納が足りない、遠い → 片付かない家=散らかるストレスに  
暗い、西日がきつい → 体感の快適さが損なわれる

 

逆にいえば、この3点が噛み合った家は「なんか住みやすい」と感じやすく、それが先ほどの良さそうの正体です。
家全体の満足度を底上げしたいなら、まずここから言葉にしてみてください。

 

 

2|【動線チェック】「歩数と曲がり角」を数えてみる

 

間取り図を眺めるとき、目で追うだけでなく「指でなぞって歩数を数える」のが最も確実な方法です。
以下のチェック表を使って、気になる間取り図を1枚ずつ確認してみましょう。

 

動線チェック表

 チェック項目  判断のものさし  確認のコツ
 玄関→キッチンの買い物動線  曲がり角が2回以内か  重い買い物袋を両手に持った状態を想像する
 キッチン→ダイニングの配膳距離  3歩以内で届くか  子どもにお皿を運ばせるイメージで安全性も見る
 洗面→物干し→しまう場所  同一フロアで完結するか  洗濯カゴを持って階段を上がる場面があるか確認
 帰宅→手洗い→リビング  途中で行き止まりがないか  子ども2人が同時に帰った場面を想定する
 朝の身支度ラッシュ  洗面・トイレ・キッチンが渋滞しないか  家族4人が7時台に集中する動きを時系列で想像
 夜のトイレ動線  寝室から照明なしでたどり着けるか  足元灯やセンサー照明の位置とセットで確認

 

ポイントは、「自分ひとりの動き」ではなく「家族全員が同時に動く時間帯」を想定すること。
たとえば平日の朝7時台。パパが洗面台を使い、子どもがトイレに行き、ママがキッチンで朝食を仕上げる。
この3つの動きが交差するかどうかを図面の上で追うと、間取りの渋滞ポイントが見えてきます。

 

よくある落とし穴

図面では短そうに見えても、扉の開く方向が動線を塞ぐケースがあります。
たとえばトイレのドアが廊下側に開くレイアウトだと、開いた瞬間に通路が半分以下の幅に。
引き戸にするだけで解消する場合も多いので、「この扉は引きか開きか」を打ち合わせで確認する習慣をつけると失敗を防ぎやすくなります。

 

 

3|【収納チェック】「しまう場所」ではなく「戻す動線」で見る

 

収納の不満は「量が少ない」よりも「使う場所から遠い」ことで起きるケースが大半を占めています。
収納率(延床面積に対する収納面積の比率)は12〜15%が目安とされますが、数字だけに頼ると「大きな納戸が1か所にドン」という設計になりがち。
大切なのは、使う場所のすぐそばに”戻す収納”があるかどうかです。

 

収納チェック表

 チェック項目  判断のものさし  確認のコツ
 玄関まわりの収納  靴+上着+カバン+外遊び道具が入るか  子どもの靴は将来サイズアップすることも計算に
 パントリーの奥行  30〜40cmで「見渡せる」か  奥行が深すぎると死蔵品が増える
 リビングの一時置き  カバン・郵便物・充電中スマホの居場所があるか  ニッチやベンチ下など「見えにくいけど近い」場所
 キッチン家電の定位置  炊飯器・電子レンジ・コーヒーメーカーが収まるか  蒸気の逃げ場とコンセント位置をセットで確認
 洗面脱衣のタオル・下着  お風呂上がりに1歩で届くか  家族4人分のタオル+着替えを同時に置ける幅か
 子どもの学用品 ランドセル・教科書・制作物の帰着点があるか  リビング学習なら帰宅〜宿題〜片付けの一連で設計
 掃除用具  フロアごとにクイックルワイパーが1本置けるか  「わざわざ取りに行く」距離があると掃除頻度が下がる
 季節もの・防災備蓄  使用頻度の低いものは「高い・奥い・遠い」でOK  小屋裏やロフトよりも手の届く天袋のほうが実用的な場合も

 

「名もなき収納」を見逃さない

家の中には、部屋として計画されない小さな収納が暮らしの快適度を大きく左右します。
たとえば階段下の空間、廊下の壁厚を利用したニッチ、洗面台横の15cm幅のスリム棚。
これらは間取り図に面積として表れにくいため、打ち合わせで「ここに棚は入りますか?」とひとこと聞くだけで、住んでからの満足度が変わります。

 

 

4|【採光チェック】「窓の数」より「光の届き方」を確認する

 

窓を多くすれば明るくなるとは限りません。窓の位置・高さ・方角、そして周辺の建物との距離によって、実際に室内に届く光の質は大きく異なります。

 

採光チェック表

 チェック項目  判断のものさし  確認のコツ
 LDKの主な採光方向  南〜東面に主開口があるか  隣家との距離が2m以下なら光が遮られる可能性がある
 高い位置の窓  ハイサイドライトや吹き抜け窓があるか  奥まった部屋にも天井付近から光を届ける工夫
 西日対策  西面の窓に庇・外付けスクリーン・袖壁の計画があるか  夏場の午後、エアコンが効きにくくなる原因になりやすい
 北面の安定光  書斎やスタディコーナーに北窓を活かしているか  直射が入らず一日中安定した明るさが得られる
 中庭・坪庭の活用  密集地で南が開けない場合の代替採光があるか  家の内側に光を落とす設計で暗さを回避できる
 冬場の日射取得  冬至の午後にLDKに日が差すか  夏と冬では太陽の角度が大きく変わる点に注意
 カーテンを開けられるか  窓の前に視線が抜ける余地があるか  隣家の玄関や道路に面していると閉めっぱなしになりがち

 

採光を考える3つの視点

採光計画には、気候によっての工夫が求められます。

 

冬の北西風対策

 風上側(北〜西面)の開口を小さくし、南東面で日射を積極的に取り込むと、暖かさと明るさを両立しやすい。  
夏の強い日差し

 南面には軒や庇を深くとり、夏至前後の高い太陽を遮りながら冬至の低い太陽は室内に招く設計が基本。  
住宅密集エリアの光の取り方

 南に隣家が迫る土地でも、ハイサイドライトや天窓、中庭で光を確保する方法がある。

 

断熱・気密が整っていれば、大きな窓を設けても温熱環境を崩さずに済みます。

 

 

5|3つのチェックを「つなげて」見る

 

動線・収納・採光は、それぞれ独立した要素ではありません。たとえば、洗濯動線(動線)の途中にランドリー収納(収納)があり、そこに外から光が入る窓(採光)がある。この3つが揃うと、室内干しでも明るく乾きやすく、しまう手間も少ない空間になります。

逆に、収納が充実していても動線から外れた場所にあれば使われなくなるし、採光のためにつけた窓が道路側で結局カーテンを閉めっぱなしなら意味が薄れてしまいます。

間取り図を見るときは、「この動線のそばに収納はあるか」「この窓は本当に開けて暮らせるか」と、3つの視点を重ね合わせてみてください。

 

 

6|打ち合わせに持っていける「質問フレーズ集」

 

設計士との打ち合わせで使える、具体的な質問フレーズを用意しました。「良さそう」を言葉にするのが苦手な方は、このまま聞いてみるだけでも打ち合わせの密度が変わります。

 

【動線について】
「朝7時台に家族4人が同時に動くと、どこが一番混みそうですか?」   
「買い物帰りに玄関からキッチンまで、何回曲がりますか?」

【収納について】
「リビングに”一時置き”できる場所はどこになりますか?」   
「子どもの靴が増えても、玄関収納は足りそうですか?」

【採光について】
「冬至の日にLDKにどのくらい日が入りますか?」   
「この窓はカーテンを開けたまま暮らせそうですか?」

 

 

まとめ

間取りの良し悪しは感覚だけで判断する必要はありません。動線は「歩数と曲がり角」、収納は「戻す距離」、採光は「光の届き方と開けられる窓かどうか」。この3つの切り口で整理するだけで、漠然とした”良さそう”が具体的な比較軸に変わります。

本記事のチェック表は、設計士との打ち合わせや見学会にそのまま持ち込んで使えるようにまとめました。「ここが気になる」と言葉にできるだけで、提案の精度は一段上がります。

 

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